ショップアンブレラ

ショップアンブレラ

「あー、傘、持って来なかったなあ。」
地下鉄の出口を出ると小雨が降り始めていた。午後のオフィス街は、行き交う車がゆったりとした間隔でワイパーを動作させていた。幅の広い歩道も、背中を丸め、早足で先を急ぐ営業職と見えるサラリーマン風の男たちがまばらに見えるだけだった。100円傘を手に入れようと、コンビニや100円ショップを探すが前にも後ろにも、道路の反対側にも見当たらない。とりあえず、まだ時間はあるので、ビルの庇の下を選びながら取引先がある方向へと歩き始めた。
通りは銀行やオフィスビルが立ち並び、時折、牛丼屋やコーヒーショップが現れる普通の街並み。スーツショップの隣に傘屋を見つけた。「『ショップアンブレラ』、へえー新しいなあ。まだ時間もあるし。」ソニープラザのようなポップな印象のウィンドウを見てさっそくガラスのドアを開き中へと進んだ。
りんごやみかんの形をした傘がフルーツシリーズ、かぼちゃや白菜の形をした傘がベジタブルシリーズとして店内にアイランド型に配置してある。
「いらっしゃいませ」ちょうど入り口近くにいた白いポロシャツの清潔な印象の若い男性店員が声をあげた。「すみません、ビニール傘ありますか?」「はい?」普通の傘屋さんでビニール傘は失礼だったかな、と思ったがもう一度。「あの、ビニール傘。」
「申し訳ございません、あいにく当店ではビニール傘は扱っておりません。びにゅうるがさならありますが、いかがですか?」「はあ?」「美乳傘です。男性客には特に人気なんですよ。」そういうと、店員はちょうどすぐ脇にあった傘を手に取り、開いた。
「おおっ!」思わず声が出る。肌色の傘はきれいなお椀型で石突部分にピンクの乳首がついており、まさにオッパイだ。
「うちのオーナーが開発したオッパイ傘、『美乳傘』です。どうです?きれいでしょ。これが一番の売れ筋でアジアン、Dカップ、ピンク仕様、です。」
「えっ?バリエーションがあるんですか?」「はい。ベースの色として白人、黒人、アジアンの基本3色、カップはいちおうAからEまで5段階、あと乳首の色がピンク、ベージュ、ブラウンの3色あって、お好みでくみあわせることができるんですよ。特注でカップサイズはIカップまではいけます。片乳タイプはオプションでヌーブラもセットできます。」
「片乳タイプということは、両乳タイプもあるんですか?」「はい、こちらです。」店員が傘を開くと確かに二山だ。柄が二股になっていて見事なオッパイが現れた。二人で差せるが彼女とは無理だろうなあ。
「こちらのオプションは本格的にブラジャーがセットできるようになっていて、
白、ピンク、赤、黒のレース仕様、手ブラ仕様があります。」
「これ、買う人いるんですか。」「ええ、大人気商品ですよ。大きめなのでゴルフに最適なんです。この辺はビジネス街じゃないですか。『手土産として使うと仕事がスムーズに進む。』なんておっしゃる常連さんも多いですよ。」
ゴルフ好きな取引先の社長が頭に浮かんだ。今日はもらった。「これ、ください。」「ありがとうございます!」

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