スキャンダル

スキャンダル

「いいかげんにしろっ!!名誉毀損で法的手段に出るぞ。この写真の男性が、うちの先生だっていう証拠がどこにあるんだ!!こんな写真じゃよく判らんね。」締め切った代議士の執務室から秘書の松木の凄んだ声が響いてきた。
「おたくの先生も最近はテレビにも出るようになってきて、認知度ありますよ。こんな野球帽にサングラスじゃ逆に目立ちますよ。私も一目見てピンと来ましたもの。」やり手記者の嗅覚はさすがに鋭い。昨日発売された写真週刊誌の目玉記事に『中堅政治家のトンデモ下半身事情』としてうちのセンセイがトップを飾った。「話にならない。」勢いよく執務室のドアが開き、まず松木が出てきた。この前室は秘書の事務室。「りえちゃん、記者さんがお帰りです。」
「ところで、この写真は何月何日何時にどこで?あ~、その時間なら先生は大事な打ち合わせの最中でしたよ。うちの先生が渋谷なんかで遊ぶはずがないでしょう。えっ?休日?政治家に休みなんてありません。あなたなんかに相手は明かせない。いづれにしてもこちらはアリバイを証明できるからね。記事の取り下げと謝罪なら今のうちだよ。」

「先生、あれほど言ってるじゃないですか。援交はまずいですよ。犯罪なんですから。あっちの面では、お金も使ってるし、不自由させてないと思いますよ。四国の選挙区に住んでる奥さんにだってばれないよう気を使ってますよ。」
「ごめん。たまには素人と遊びたいじゃない。まさか未成年とは思わなかったさ、歳をごまかして。たまの休みだからちょっと羽を伸ばしただけでしょうが。なんかさ、青少年の行動調査中だったとか、そんなんでいけないかな。」
「無理ですよ。だいたい、ホテルに入るところをばっちりじゃないですか。今は不倫路上キスで辞職もあります。アリバイを作るしかありません。今回は高くつきますよ。レンガひとつは覚悟してください。財界の大物も動かします。いつもの料亭で打ち合わせ中だったことにしますから、そのつもりで。」
「よし、松ちゃんそれでいこう。自分は幹事長に呼ばれてるし行ってくる。」
ドアが開き、執務室から先に出てきたのは代議士だった。ドア横に貼ってある2年前の選挙ポスターと顔が重なる。3期目。30代最後の選挙を前に撮影したその顔は誠実な青年そのもの。そして赤文字のスローガン、『世界の舞台に発信・ニッポン!』。NGOで活動した経験を生かし、国際貢献に力をいれているが、今回は渋谷のギャルに援助してしまった。

「ったく、ティッシュペーパーだな。分かる?軽いんだよ。脳みそも軽けりゃ、下も軽い。しかし高くついた援助だぜ。井戸を何本掘れるんだっつうの。あっ、この電話、幹事長室から。」松木がケータイに出る。「はい、はい、えっ、でも、はあ、こちらも工作の努力を、え?、そんな、分かりました。」
「りえちゃん、終わりだ。幹事長がうちの先生に引導を渡したって。あとは自分の身だけ考えればいいって。荷物をまとめたら、早くここから消えるよ。」

翌週、電車の中吊りで。『元秘書が語る。「隠蔽工作を強要されました。」』

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