まぶしい太陽

まぶしい太陽

「とってもセクシーなドレスだね。こんなに上手く着こなせるのは君しかいないよ。」黒いホルターネックのワンピースドレスに身を包んだ彼女を見て、つい、言葉が出た。アップにしたヘアスタイル、黒くて長いまつげが魅力的な目元、ふくよかな美唇、艶かしいボディライン、全てが神々しい。彼女が放つフェロモンが僕の脳神経に直接襲い掛かる。もう僕には君しか見えていないんだ。

「そう言うあなたもとっても凛々しいわ。その厚い胸板にブラックスーツは似合いすぎる。」上目使いで僕を見る彼女の眼差しに胸が苦しくなる。微笑んで細くなった目が愛しい。どうしてそんなに僕を苦しめるんだ。

早く君とひとつになりたい。そんな断続的に心に現われる、突き上げる衝動を抑えながら、彼女の瞳に向かって僕は言った。
「ウォーターフロントに最高のスウィーツを見つけたんだ。食べに行こう。」彼女の瞳孔がさらに黒さを増し、僕を甘く見つめ上げる。
「さあ」
彼女の背中にやさしく手を添えてエスコートする。

「でも不思議ね。あなたのような御曹司がどうして私なんかと。」
彼女が言うように、アーリーアリアンツカンパニーはファミリービジネスだ。今は見習いとして商社部門の主力である食料事業部でロジスティクスを担当しているが、周りはみな、いづれ僕がトップに就くと期待している。
しかし、僕はそんな気はなかった。出来上がった会社を譲り受けるなんて卑怯だ。親父のように一からリスクを背負って独立してこそ男だと思う。

僕は並んで歩く彼女に向かって微笑み返した。言葉になんてならない。
彼女はカンパニーの保育事業部で保育を担当している。彼女が子供に接するときの姿はほんとにマリアそのものだ。全ての子供に対して王様に接見するような態度で臨む。
次第に水辺の癒しが感じられるようになってきた。今日は太陽も特別に熱い。

僕らは水辺のベンチに腰を下ろした。きらきらとした反射が君の顔をまぶしく照らす。彼女と一緒にいるだけで心に幸福感が満たされる。彼女の存在自体が僕を受け入れてくれる包容力に溢れている。
「ねえ、あそこに係留されているクルーザー、素敵じゃない?いいなあ。あんな船に乗って、知らないところへ行ってみたい・・・。」
「誰もいないから乗ってみようか。ちょっと覗いてみるだけだよ。」
僕も好奇心いっぱいだった。こんなに立派なクルーザーを見たのは初めてだ。
僕は、「だめよ」という彼女の手を引いて、クルーザーに乗り込んだ。思った以上に中は広い。ひと通り物色したあと、ふたりで甲板に寝転んだ。相変わらず太陽がまぶしい。
「君とだったらどんなところにでも行ける。新しい土地で君といちから僕らの王国を創りたいんだ。僕らならできる。」
彼女の目から涙がこぼれる。「ありがとう。でも、ありえないわ。うそ言わないで・・・」


・・・「かあさん!ボクのつくったフネにアリさんが乗ってるよ!うれしいなっ。このまま流しちゃおう。」
ちっちゃいオテテが笹舟を小川に浮かべた。「バイバイ!!」

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作者コメント

2003年7月の作品。

アリさんの世界を創造してみました。アリーアリアンツカンパニーの食糧事業部のロジスティック、それは働きアリでエサ運び担当です。保育事業部はもちろん幼虫の話係です。

アリさんだけに、「ありがとう、でも、ありえないわ。」の部分がとても気に入っています。

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